部活の現状と付き合い方

部活を取り巻く2つの問題点

 最近、中学校の部活動に関しての問題点がテレビなどでも取り上げられる機会が多くなっています。「ブラック企業」になぞらえて「ブラック部活」などと刺激的な見出しを付けて論じられることの多いこの問題は、主に①指導する教員の時間的、体力的負担の大きさ(つまり教員の労働環境問題としての側面)と、②長時間におよぶ部活動による生徒たちへの負担の大きさ(教育活動として相応しいものになっているか)という2つの問題から構成されていると言えます。今回は特に②の「生徒に対する負担」という点について考えてみたいと思います。

部活に関するガイドライン

 運動部活動の在り方を検討するスポーツ庁の有識者会議は、今年の3月に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(指針)」を発表しました。ガイドラインの骨子は次の通りです。

・休養日は週2日以上で、平日は1日以上、土日で1日以上。
・夏休みなど長期休業中は部活動も長期の休養日を設ける。
・1日の活動時間は平日2時間、休日3時間程度。
・科学的トレーニングを導入し、短期間で効果が得られる活動にする。
・スポーツクラブなどと連携し、地域のスポーツ環境整備を進める。
・大会の統廃合を進め、学校が参加する大会数の上限を定める。

 部活動の時間について、国がその上限を示すのは初めてのことです。このガイドラインを受け、これから各都道府県の教育委員会や学校がそれぞれ方針を策定することになります。実は、部活動の休養日は1997年に当時の文部省が「中学校は週2日以上」「高校は週1日以上」と目安を示していました。しかし現場に浸透せず、2016年に全国の中学校を対象に実施した調査では、22.4%が休養日を設けていないことが分かりました。こうした経緯があって、今回のガイドライン策定の動きになったのだと思います。

実際の状況

 では、実際の部活状況はどうなっているでしょうか。生徒たちの様子を見たり、部活の話を聞いたりした感じでは、これまでとあまり変わったという印象はありません。例えば、「休日は早朝から始まって夜までやっている」とか、「定期試験まで1週間を切っていても試合が近いので練習がある」とか、「定期試験の問題を解いている途中で一時中断して試合に行き、終わってから試験の続きを行う」など、生徒たちにかなり重い負担がかかっていると思われる話をよく聞きます。もちろん全ての部活がこれほど過酷ではないと思いますが、生徒たちがヘトヘトになり、体力も勉強時間も削られるという部活はけっこう多いようです。
 それほど支障があるのであれば、部活をやめればいいのではないかという意見もあるかもしれません。しかし、これもそう簡単ではありません。途中で投げ出すことの悔しさもあるでしょうし、自分が辞めることで周囲の部活仲間たちへ迷惑がかかることを恐れてやめられないケースもあります。つまり勉強と部活の板挟みになって苦しんでいる生徒が数多くいるということです。
 こうした生徒たちの悩みは、同時に私たち教師の悩みでもあります。理解不足の生徒に授業前や授業のない日に補習をしようと思っても「部活があるから行けない」と断られてしまうことがあるのです。そういう場合、基本的には無理強いはしません。しかし、あまりにも理解不足が深刻である場合などは、何とか時間を作れないか生徒と相談します。部活のことで頭がいっぱいになっている生徒に、勉強が危機的状況にあるということを認識させるためです。
 部活の在り方についてはようやく改善の動きが見え始めたとはいえ、まだ現場レベルではすぐに変わるとは思えません。部活が中学生の成長にとって有用であることは確かなことです。勉強と部活を両立できるよう塾としてもサポートしていきたいと考えています。